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モロッコの先住民は、二枚の銀の円板をそれぞれ打ち出して丸みを作り、これをコイル状の帯で接合し球状にします。それぞれの面を6つの粒で飾り、同時に、6つの窪みには緑、赤、青などのエナメルを流し入れ、繰り返して盛り上げます。本品は、こうした特徴が見られ、モロッコ先住民の銀細工ビーズと言えます。　銀の純度は不明ですが、本品の中央には、球形片側にやや太めの3本線が巻かれ、中央の線には小さな金づち状の道具で中央線を軽く叩き、小さな凹凸を刻んでいます。端の、やや細い3本線では、もっと小さな凹凸が小玉のように連続し打ち出されています。胎の他の側でも、やや太い3本線、細い3本線とその装飾は同じです（3，4枚め）。　孔のある面では、周囲に6つの粒を付け、平面では孔を除き6つの小皿状の凹みが細越され、そこに薄緑、赤、濃紺のエナメルを、向い合った小皿状の凹みに流し込んでいます。胎の裏側も3色のエナメルが同様に流し込まれていますが、6つの粒はやや小さくなっています。手の込んだ銀細工とエナメル細工が、モロッコのビーズを飾ります（4－8枚め、8，10枚めは光を当てています）。　他方、右側のビーズでは、銀細工などは同じ構成ですが、エナメル細工がやや雑に流し込まれています。薄緑のエナメルは、小皿状の凹みをはみ出したり、黒みがかった小さな緑となり、また、赤のエナメル1つは剥落しています。裏側では、濃紺のエナメルが十分に溶けず砂状に残り、剥落が見られます。職人の技により、右側のビーズの完成度が目立ちます（9-10枚め）。　北アフリカや中東地域では銀ビーズは多いに用いられます。アラビア半島の東のドバイでも南のイェメンでも、アフリカ大陸ではエジプトからモロッコまで、粒々で飾った銀細工ビーズと、魔よけで多産のシンボルであるサンゴを大いに好みます。イェメン対岸でキリスト教徒のエチオピアでは、銀細工の十字架ビーズを身につけます。粒々飾りの本品も、銀ビーズのゆえに「エチオピア・シルバー」ビーズと称されますが、モロッコの先住民トウアレグなどの銀ビーズは有名です。　本品は、細工の細かな、きりりとした銀製ペンダント・トップとして使えそうですし、モロッコなどへの旅心をかきたたせてくれます。サイズ（左側）：高さ　約11㍉、幅　約12㍉　孔径　約2㍉

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